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どこまでやれるか判らないけどSS更新用として。 無断転載不可。
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* * *

どうしてその日に限ってその気配に気がついたのか。今思い返してもよく判らない。
けれどそれがたぶんあいつのギリギリだったのだと、それだけは確信できるのだからコレはコレでひとつの運命って奴なのかもしれない。


いつもならば深い眠りについているその時間。
ふと目が覚めたオレはすぐに隣のベッドに休んでるはずのアルの様子がおかしいことに気がついた。
うなされてるわけではない、むしろその逆で妙に静か過ぎるのだ。

「アル?」

声をかけてみてすぐに眠っていないことは知れた。
いくら暗いったって闇に目が慣れた状態で様子を伺うくらいのことは簡単にできる。
真の闇を経験してるオレたちにはなおさらだ。
びくりと跳ねた肩に気がついたオレはすぐに飛び起きるとアルの傍へと駆け寄った。

「お前・・・・」

大きくなってからはすっかり目にする機会のなくなったアルの涙。
慌てて拭ったのだろうそれにオレが気がついたこと、気配に敏いアルはすぐに気がついたようだった。
バツの悪そうな表情をした、今ではオレよりもでかくなったけれど、やっぱりオレにとってはいつまでたってもかわいい弟であるわけで。
 小さな頃の様に抱きしめて眠ってやればアルも落ち着いて眠れるんじゃないか、と。

そう、思ったんだ。
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* * *
 
共同での研究が始まり、より深い討論を戦わせるようになってまもなく、ひょんなことで義手の具合を悪くしてしまった。
これに関しては父親が全面的に面倒を見てくれていたため一旦帰ってから改めて出直してくることにしたのだが。
 
彼、が。
 
どうしてもついてくると聞かなくて困り果てた。
何から何まで弟と似通っているわけではないのは一緒にすごしているうちに判ってきた。
外見上の相違点以外にも、気性的なものがちらほらと見受けられるので混同してどう、というわけではないのだけれど・・・幼い時からの刷り込みだろう。
この顔にダメ?といわれると断れないのはどうしたものか。
 
結局根負けして荷物持ち代わりに付き合ってもらう事にしたのだか。
他のメンバーの誰に付き合ってもらうより気が楽なのは否めないし・・・というか、父親が見たらなんというやら。そのほうが正直気が重いかもしれないとふと思った。
 
道中やはり何度も転びかけたオレについてきてよかったでしょとばかりににんまりされたのはちょっとばかり腹が立ったが紛れも無い事実であったのでとりあえず黙殺しておいた。
荷物一つ持つだけで体のバランスが狂うのは確かだしまた持ってもらったお陰で動きやすかったのもまた確かだった。
 
父親との生活の場であるアパートメントに帰り着いて異常に気がついた。
残された大量の義手義足と部屋の中、争った跡。
散らかった資料の中からオレ宛の伝言を見つけて愕然とした。
オレの様子に横からそれを覗き込んだアルフォンスが慌てて通報しようと飛び出しかけたのを咄嗟に抑える。
走り書きめいたものとはいえ、あえて伝言を残していったということは多分、探されたくは無いのだと思う。そういうところはとんでもなく不精な男だ。
足の踏み場も無い室内を簡単に片付けながら今後を考える。
収入がなくなってしまう以上、この状態での研究の続行はかなり厳しいことになる。
せっかくついてきてくれた彼にも申し訳ないことになったななどと考えていたら先ほどから手を同じように動かしつつ何やら考え込んでいた彼がおもむろに口を開いた。
 
曰く。
 
「僕のアパートメントに来ませんか?」
 
こんなことのあったところに住まわせたくない、というよりもいっそ引き払ってしまったほうが経済的な負担も多少なりとも軽くなるだろう。行き先は堅く口止めした上で大家に預けていけば万一帰ってきたとしても音信普通にはならないだろうし。
部屋自体は前の同居人が出て行ってからそのまま一人で暮らしてるから空いてる部屋があるし、心配なら内側からかかる鍵もつけるからとそこまで口にして目の前で首をかしげているオレの顔に気がついたようだ。
 
「なんで鍵?」
「~~~~貴女はもっと女性としての自覚を持ってください!」
 
そこまで言われてようやく彼が何を心配しているのか納得した。普通一つ屋根の下っていったら真っ先に心配することだろうにと小言がついてきたのはご愛嬌か。


   * * * *


気がついたときには以前垣間見た風景。そして見知った顔。
再び失っていた手足のために動けなくなっていた自分に間に合わせの手足をくれた不肖の父親にそれでも少しは感謝した。
母絡みの恨み言はきっと一生消えることは無いのだろう。けれどそれでも自分の存在を庇護する存在だとの認識を持ったらしい父親は出来る限りのことはしてくれようとしているらしい。
その手を振り解いて立つには余りにもこちらでの生活は難しく、また手足の欠損は通常の生活さえも脅かせていた。
 
慣れない手足はひどく自分を傷つけた。身体を支えるにも思うように動かせず、またそれらを支えるバンドはきつく身体に食い込んで幾度も皮膚を裂いた。
手当てをする際に弟以外の男の手が触れてくることに幾度も怖気が走ったけれどそれもまた我慢しているうちに何とか耐えられるようになった。
 
自分だけでゆっくりとでも行動が出来るようになり、今度は元の世界へと帰る手段を探すようになってししばらく。父親の外出が増えるにつれ妙な集団からの連絡が増え始めた。
以前意識だけが門を潜ったあのときに見た顔も中には含まれていて。
不安が無かったわけではない。
ただ自分に係わることがあるのならば、今の父親なら告げてくるだろうとそう割り切って研究に没頭することにした。
*  *  *
 
 
「あー疲れたっっ!」
 
ホテルの部屋に戻ってきた途端、そう叫んできっちり着込んでたスーツのネクタイを解きにかかった存在に苦笑する。
彼は本当に堅い場が苦手なのだ。
正直僕と出会うまでよくも一人であの華やかな世界を渡って来たものだといつも思うのだが。
 
「もぅ・・・せっかくの僕の傑作、そんな簡単に壊しちゃわないでよ」
 
スタンダードな結び方もいいのだけれど、彼には変わり結びのほうが映える。
毎度僕が工夫した結び方をするのをあきれ半分で見ている本人は、スタンダードな結び方も覚束ないものだからいつも僕にされるがままだ。
ついでに結ぶのもダメなら解くのも実はダメだったりする。大抵こんがらがって途中で泣き言言い出すのにいつも僕が解くまで我慢できないんだよね。
今ももたもたチャレンジしてるけど・・・音を上げるのは時間の問題だろう。
 
「ほら、そんなに引っ張ったら解けるものも解けなくなっちゃうよ。貸して兄さん」
 
実のところ本当はボクの方がはるかに年を重ねているんだけど、肉体の年齢設定が彼のほうが一歳だけだけど上というので便宜上『兄さん』と呼んでいる。
実際どっちが上に見られるかって言ったら僕のほうが上に見られるのが普通だ。けど彼はボクが『兄さん』と呼ぶことでどうやら満足してるらしいのでそれはそれでいいかと内心苦笑しつつも彼の望むようにしてるのが現状だ。
 
一夜の相手を探すのに夜毎開かれる舞踏会は後腐れなくて最適。
アルコールに弱い人ならちょっと火遊びした後に気分が悪く位のことはままあることで。
紙一重の色事の末、ほんの少し酔いが回ったと感じるくらいの生気をいただくことが僕らの夜毎の食事になる。
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