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* * *
 
共同での研究が始まり、より深い討論を戦わせるようになってまもなく、ひょんなことで義手の具合を悪くしてしまった。
これに関しては父親が全面的に面倒を見てくれていたため一旦帰ってから改めて出直してくることにしたのだが。
 
彼、が。
 
どうしてもついてくると聞かなくて困り果てた。
何から何まで弟と似通っているわけではないのは一緒にすごしているうちに判ってきた。
外見上の相違点以外にも、気性的なものがちらほらと見受けられるので混同してどう、というわけではないのだけれど・・・幼い時からの刷り込みだろう。
この顔にダメ?といわれると断れないのはどうしたものか。
 
結局根負けして荷物持ち代わりに付き合ってもらう事にしたのだか。
他のメンバーの誰に付き合ってもらうより気が楽なのは否めないし・・・というか、父親が見たらなんというやら。そのほうが正直気が重いかもしれないとふと思った。
 
道中やはり何度も転びかけたオレについてきてよかったでしょとばかりににんまりされたのはちょっとばかり腹が立ったが紛れも無い事実であったのでとりあえず黙殺しておいた。
荷物一つ持つだけで体のバランスが狂うのは確かだしまた持ってもらったお陰で動きやすかったのもまた確かだった。
 
父親との生活の場であるアパートメントに帰り着いて異常に気がついた。
残された大量の義手義足と部屋の中、争った跡。
散らかった資料の中からオレ宛の伝言を見つけて愕然とした。
オレの様子に横からそれを覗き込んだアルフォンスが慌てて通報しようと飛び出しかけたのを咄嗟に抑える。
走り書きめいたものとはいえ、あえて伝言を残していったということは多分、探されたくは無いのだと思う。そういうところはとんでもなく不精な男だ。
足の踏み場も無い室内を簡単に片付けながら今後を考える。
収入がなくなってしまう以上、この状態での研究の続行はかなり厳しいことになる。
せっかくついてきてくれた彼にも申し訳ないことになったななどと考えていたら先ほどから手を同じように動かしつつ何やら考え込んでいた彼がおもむろに口を開いた。
 
曰く。
 
「僕のアパートメントに来ませんか?」
 
こんなことのあったところに住まわせたくない、というよりもいっそ引き払ってしまったほうが経済的な負担も多少なりとも軽くなるだろう。行き先は堅く口止めした上で大家に預けていけば万一帰ってきたとしても音信普通にはならないだろうし。
部屋自体は前の同居人が出て行ってからそのまま一人で暮らしてるから空いてる部屋があるし、心配なら内側からかかる鍵もつけるからとそこまで口にして目の前で首をかしげているオレの顔に気がついたようだ。
 
「なんで鍵?」
「~~~~貴女はもっと女性としての自覚を持ってください!」
 
そこまで言われてようやく彼が何を心配しているのか納得した。普通一つ屋根の下っていったら真っ先に心配することだろうにと小言がついてきたのはご愛嬌か。
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